犬の去勢・避妊手術

去勢と避妊手術は、昔は望まない子犬を防ぐことで、不幸な結果となるワンちゃんを1頭でも減らすことを目的に行われていました。ワンちゃんは1回の出産で何頭も子犬を生みます。すべての子犬を飼育することや、里親を探すことは、簡単ではありませんでした。現在は、ホルモンが影響する病気の予防、例えば乳腺腫瘍、や問題行動、例えば想像妊娠やオス同士のケンカ、を予防することに替わりました。現在も昔も人と動物が快適に生活できるようにするための手術です。

ワンちゃんの去勢手術

去勢とは

通常の去勢は陰嚢から睾丸を取り除くことですが、中には睾丸が鼠径や腹腔内に留まっていることがあります。これも去勢手術になります。

去勢手術を受けるタイミング

雄のワンちゃんは、雌のワンちゃんの発情に誘発され、交尾欲がでてきます。去勢手術は、ワンちゃんの生殖能力が完成する前に受けるのが良い時期だとされています。個体差はあるものの、生殖能力が完成するのは生後1年ごろとされていますので、その前に受けるのが良いでしょう。

去勢手術は、10歳を過ぎたシニアのワンちゃんなどでも受けることは可能ですが、若いワンちゃんと比べて麻酔のリスクが高くなってしまいます。安全に手術を受けさせてあげるためにも、できるだけ早い時期にご相談いただくことをおすすめします。

去勢手術のメリット・デメリット

去勢手術のメリット
生殖器関連の病気が予防できます

一定の年齢(5歳以上)を過ぎると、生殖器の病気やホルモン由来の病気リスクが高くなります。生まれて半年を過ぎた頃に去勢手術をして頂くと、そうした病気からワンちゃんを守ることが可能となります。

去勢手術を受けることで防げる病気

  • 精巣腫瘍
  • 精巣炎
  • 精巣上体炎
  • 前立腺肥大
  • 前立腺炎

去勢手術を受けることでリスクが低減できる病気

  • 肛門周囲腺腫
  • 会陰ヘルニア
問題行動の抑制に繋がります

マーキング、他のワンちゃんとの喧嘩などの問題行動の抑制に繋がります。ワンちゃんと快適にペットライフを送るためにも、去勢手術は大切なものなのです。

生殖に関わるストレスから解放させられます

去勢手術を受けることで、生殖能力がなくなりますので、生殖に関わるストレスから解放させられるようになります。発情期の雌のワンちゃんを追いかけ回したり、他の雄のワンちゃんと喧嘩したりするなどの問題行動も少なくなるとされています。

発情のストレスから解放されます

避妊や去勢手術の目的の1つに、「ストレスからの解放」というものがあり、メスの発情に伴う性的欲求を感じさせないようにするためや、他のワンちゃんとの喧嘩などの問題行動を抑制するためにも、生後6ヶ月ごろに手術を受けさせてあげることをおすすめします。

去勢手術のデメリット
生殖能力がなくなります

去勢手術では精巣(睾丸)を摘出しますので、ワンちゃんの生殖能力がなくなります。そのため、手術を受けた後、「この子の子供が欲しい」と思っても子供を作ることはできなくなります。

太りやすくなるとされています

ホルモンの分泌が減り、基礎代謝が低下します。手術前よりも太りやすくなるとされています。肥満体型のワンちゃんは病気にかかりやすいので、手術後は低カロリーのフードに切り替えるなどして、肥満を予防するようにしましょう。ワンちゃんの肥満が心配で、「どんなごはんをあげたらいいかわからない」という方などは、お気軽に当院までご相談ください。

去勢手術で予防できる病気

精巣腫瘍

精子を作り出す精巣にできる腫瘍です。加齢などが主な原因です。精巣腫瘍を予防するためには、去勢手術を受けるのが一番だとされています。4歳から腫瘍になる可能性があり、10歳を過ぎると発生率が高まるとされています。予防するためには、手術をするしかありません。

前立腺肥大

精液の希釈液を作る前立腺が肥大する病気です。前立腺は、膀胱の出口にあって、尿道を囲んでいます。肥大すると尿をすべて排泄できなくなり膀胱炎になり、血尿と残尿感の症状が現れます。また、前立腺の上にある直腸を圧迫して、便に出血が見られることがあります。

肛門周囲腺腫

肛門まわりや尾にできる腺腫です。肛門周囲腺腫の発生にはホルモンが関わっているため、未去勢の高齢のワンちゃんにできます。若いうちに去勢手術を受けておけば、肛門周囲腺腫ができません。

会陰ヘルニア

会陰ヘルニアとは、肛門の周りの筋肉の萎縮が起こることで、腸や膀胱などの臓器が外へ飛び出してしまった状態です。前立腺の肥大があると起こりやすいといわれています。排尿・排便困難などの症状が現れます。

去勢手術の流れ

1術前診察

当院へ来院したことがある方は、健康状態、年齢、体格などを確認させていただいていますので、お電話または直接予約をしてください。来院されたことが無い方は、予約していただいた日に身体検査をさせて頂きます。

また、前日の夜・当日の朝のごはんと水についての注意点を詳しくご説明させていただきます。

2手術前日

手術前日の夜ごはんは、いつも通りあげてもらって大丈夫です、ただし、夜8時ごろまでにごはんを済ませるようにしてください。

3手術当日

手術当日の朝は、ごはんをあげずに絶食でお願いします。お水は、与えずにご来院ください。

4ご来院

午前9時から11時までに、当院へワンちゃんを連れてきてください。血液検査などの術前検査を実施して、手術が安全に行えるかどうか確認します。通常、手術はお昼から行います。

5手術

去勢手術は、全身麻酔下で行います。ワンちゃんの状態の最終チェックを行った後、麻酔を実施します。注射で麻酔前投薬を投与し麻酔器でガス麻酔をかがせ寝かせます。眼腱反射がなくなれば気管チューブを設置して吸入麻酔を行います。手術中のワンちゃんの状態は、生体モニター装置で心拍数、呼吸数、血圧、酸素飽和度を測定して常に監視します。

毛刈りと消毒を行った後、陰茎の付け根を5cm程度切開して睾丸を摘出します。通常、手術時間は1時間程度です。

6手術終了

手術が終わり、ワンちゃんの状態に異常がないか1から2時間観察します。問題が無ければ夕方ごろにお返しします。なお、飼い主様がご希望になる場合には、手術前日・後日に1泊入院していただくこともできます。ご希望の方はお気軽にお申し出ください。

去勢手術後の注意

ワンちゃんが傷口を舐めないようにご注意ください

基本的に手術後の生活に影響することはありません。ですが、ワンちゃんが術創を舐めたりすると、傷口が開く場合がありますので注意しましょう。ワンちゃんが術創を舐めないように、手術後はエリザベスカラー(首まわりに巻く円錐台形状の保護具)を装着させます。

手術後の肥満にご注意ください

去勢手術を受けると基礎代謝が低下し太りやすくなります。そのため、手術後は今まで通りのドッグフードではなく、低カロリーの物に切り替えることをおすすめします。

去勢手術の費用の目安

20,000円~

※ワンちゃんの体重・年齢・病気の有無などによって、費用は変動します。
※上記の料金には、診察料、血液検査料、全身麻酔料、手術技術料、点滴料、手術室使用料、手術器具滅菌料、器具料(針・縫合糸・マスクなど)、入院料(基本は日帰りとなります)などが含まれています。
※飼い主様がご希望になる場合には、手術前日・後日に1泊入院していただくこともできます。ご希望の方はお気軽にお申し出ください。

ワンちゃんの避妊手術

去勢手術よりも複雑な手術になります

去勢手術と比べると複雑なものになり、腹側正中切開をして左右の卵巣と子宮を探し摘出する開腹手術となります。出血も多く、電気メスを使い止血しながら皮膚を切開します。また、高齢のワンちゃんは腎臓と卵巣をつなぐ靭帯が固くなり引っ張り出すことが大変になることもあります。

このような説明をお聞きになると、飼い主様の中には手術を受けさせることに不安を覚える方もおられると思いますが、ご安心ください。東大阪市の「かかりつけの動物病院」であるシモダ動物病院では、術前の診察や問診などで、ワンちゃんの手術の適応をきちんと確認するのはもちろん、術中の出血を抑えたり、できるだけ手術時間を短くしたりして、ワンちゃんへのリスク・負担の低減に努めています。また、麻酔につきましても、安全第一の環境下でとり行っています。

手術時間は12時間程度で、基本的には手術当日に連れて帰っていただくことができます。ですが、「不安なのでもう1日様子をみてほしい」ということでしたら、1日入院していただくこともできます。

避妊手術を受けるタイミング

避妊手術の大きな目的の1つである「卵巣・子宮の病気予防」は、初めての発情を迎える前に受けるのと、その後に受けるのとでは、効果が大きく違ってくるとされています。雌のワンちゃんで多くみられる乳腺腫瘍は、初回発情前に避妊手術を受けることで、ほぼ100%予防できます。

こうしたことなどから、避妊手術は初回発情前がベストなタイミングとされていて、個体差はありますが生後1年前後に初めての発情を迎えますので、生後6ヶ月ごろに受けられることをおすすめします。

メリット・デメリット

避妊手術のメリット
オスから守る

雌のワンちゃんは約1年に2回発情します。この発情の時期は、匂いで雄をひきよせます。去勢をしていない雄が近くにいた場合、しつこく追いかけてきます。さらに、数匹オスがいた場合は取り合のケンカになるかもしれません。そうした事態を避けるために飼い主様が出産を望まれていないのであれば、きちんと避妊手術を受けさせてあげて妊娠を防ぐようにしましょう。人間とワンちゃんが共生するために、避妊手術は必要なものなのです。

卵巣・子宮の病気が予防できます

避妊手術を受けることで、乳腺腫瘍、子宮蓄膿症などの病気が予防できるようになります。このうち特に乳腺腫瘍の予防率は高く、初回発情期前に手術を受けさせてあげれば、ほとんど100%予防できるとされています。また、高齢のワンちゃんでは子宮蓄膿症が多くみられますが、これも避妊手術を受けることで予防できるようになります。

発情期の問題行動が抑制できます

雌のワンちゃんは、発情期に食欲低下や神経質になるなどの変化がみられる場合があります。さらには想像妊娠を起こすケースもあります。これらの行動は避妊手術を受けさせてあげることで予防可能となります。

避妊手術のデメリット
妊娠できなくなります

避妊手術では、卵巣または子宮、あるいは両方を摘出しますので、手術を受けたワンちゃんは妊娠できなくなります。

太りやすくなるとされています

避妊手術を受けると、手術前よりも食欲が増すことがあり、そのため肥満傾向になる場合があるとされています。手術後は食事内容に注意し、適度に運動させて、肥満に注意するようにしましょう。

避妊手術で予防できる病気

乳腺腫瘍

乳腺腫瘍はワンちゃんでよく診察する腫瘍です。発情が2回以上あったメスのワンちゃんの約25%がなります。人の腫瘍と違い全体の50%が悪性です。避妊手術で予防できる卵巣・子宮の病気は色々ありますが、特に乳腺腫瘍は高確率で予防できるようになるとされています。避妊手術を受ける時期によって異なり、初回発情前に受ければ99.9%予防できるといわれていますので、初めての発情期が来る前、生後6ヶ月ごろに手術を受けさせてあげるようにしましょう。

乳腺腫瘍の予防率

  • 初回発情前・・・99.9%
  • 初回発情後・・・92%
  • 2回目の発情後・・・74%
  • 2.5歳以降・・・0%
子宮蓄膿症

出産経験のない高齢のワンちゃんに多くみられる病気で、子宮内膜で細菌が増えて炎症が起こり、膿が溜まります。発症当初はほとんど症状は現れませんが、進行するにつれて元気消失、食欲不振、発熱、嘔吐、下痢、多飲多尿などの症状が現れます。さらに進行すると、命にかかわる恐れがあります。若いうちに避妊手術を受けさせてあげて、しっかりと予防するようにしましょう。

避妊手術の流れ

1術前診察

まずは当院へワンちゃんを連れて来てもらって、ワンちゃんの健康状態、年齢、体格などを確認するほか、血液検査などの術前検査を実施して、手術が安全に行えるかどうか確認します。

また、飼い主様へは手術の内容や、前日の夜・当日の朝のごはんについての注意点など、詳しくご説明させていただきます。

2手術前日

手術前日の夜は夜8時ごろまでにごはんを済ませるようにしてください。お水は飲んでも大丈夫です。

3手術当日

手術当日の朝は、ごはんをあげずに絶食でお願いします。お水は与えないでください。

4ご来院

9から11時間に、当院へワンちゃんを連れてきてください。通常、避妊手術は診察が終わってから行います。

5手術

避妊手術は、全身麻酔下で行います。ワンちゃんの状態の最終チェックを行った後、麻酔を実施します。麻酔器で酸素をかがせながら注射で麻酔薬を投与し、ワンちゃんが眠ったら、気管チューブを設置して吸入麻酔を行います。手術中のワンちゃんの状態は、生体モニター装置で心拍数、呼吸数、血圧、酸素濃度などを測定して常に監視します。

毛刈りと消毒を行った後、開腹して卵巣または子宮、あるいは両方を摘出します。通常、手術時間は1~2時間程度で日帰りとなります。

6手術終了

手術が終わり、ワンちゃんの状態に異常がなければ、飼い主様にお返しします。ほとんどの場合、夕方ごろにお返しします。なお、飼い主様がご希望になる場合には、手術前日・後日に1泊入院していただくこともできます。ご希望の方はお気軽にお申し出ください。

7抜糸

避妊手術は開腹して行いますので、手術後10-14日後に抜糸が必要になります。

避妊手術後の注意

手術後の合併症にご注意ください

避妊手術後、特にご注意いただきたいのが、ワンちゃんが術創を舐めることで起こる炎症や化膿などの合併症です。ワンちゃんにエリザベスカラー(首まわりに巻く円錐台形状の保護具)を装着させて、術創を舐めないようにしますが、飼い主様の方でも傷口を舐めていないか注意してみてあげるようにしてください。

手術後の肥満にご注意ください

避妊手術を受けた後は、術前よりも食欲が増幅して、太りやすくなる場合があるとされています。肥満のワンちゃんは糖尿病などの生活習慣病になりやすいので、ごはんの量を調整したり、低カロリーのフードに切り替えてカロリーを抑えたりするなどして、肥満を予防するようにしましょう。

避妊手術の費用の目安

30,000円~

※ワンちゃんの体重・年齢・病気の有無などによって、費用は変動します。
※上記の料金には、診察料、血液検査料、全身麻酔料、手術技術料、点滴料、手術室使用料、手術器具滅菌料、器具料(針・縫合糸・マスクなど)などが含まれています。
※飼い主様がご希望になる場合には、手術前日・後日に1泊入院していただくこともできます。ご希望の方はお気軽にお申し出ください。

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